「日本株式会社」「企業戦士」「モーレツ社員」…
この言葉に「!」と思った人は、きっと激動の昭和~高度経済成長期を第一線で戦い抜いてきた方達ではないでしょうか?
また、昭和から平成に移り変わる頃のバブル期には、テレビCMから「24時間働けますか?」というフレーズが生まれ、新語・流行語大賞にも選ばれたのも思い出されることでしょう。
これらの表現は、まさに当時の日本における「働き方」を映し出しています。
時代は、昭和~平成から令和へと移り変わりましたが、「少子高齢化」「人口減少」に直面している日本では、「誰もが活躍できる社会(=一億総活躍社会)の実現」に取り組んでいます。
それには、新しい働き方、つまり「働き方改革」が必要不可欠な要素となっています。
企業に突き付けられる課題
国では「雇用の促進」や「雇用格差是正」「長時間労働の解消」と言った働き方改革への取り組みを企業に対し求めています。
また、時代の移り変わりとともに働き手の働くスタイルも様々な形で多様化させ、これまで歩んできた日本の働き方では出来なかった「自分の生活や時間を大切にしていこう」とする『ワークライフバランス』という考え方も推進しています。
「人口減少」→「労働人口の減少」という将来を進んでいる日本を考えると、働き手の人財価値はますます高まるはずです。
しかし、現実には一人の働き手に多大な仕事を押しつけ、なかば強制的に長時間労働を強いられ、挙句の果て過労死や自殺につながる悲しい出来事があることも事実です。
そうすると、企業の側にとってもこれまでの働き手に対する見方も変わらなければいけません。
企業経営における人材や雇用に対する考え方を見直し、働き手の労働環境整備と言った社会的責任という側面でもいっそう問われることになりそうです。
ワークシェアリングという考え方
新しい働き方の一環として、国では『ワークシェアリング』を推奨しています。
ワークシェアリングとは、「仕事を分け合うこと」、つまり、これまで一人の働き手が行っていた仕事量を複数人に分担することによって、一人あたりの労働時間の削減や新たな雇用を増やしていこうとする考え方です。
すでにヨーロッパでは、導入が進んでいますが、日本でも注目されつつあります。
企業側にとっては、フルタイム勤務という労働条件を撤廃することで、様々な働き手の事情に合わせて柔軟な雇用ができるようになり、優秀な人材が創出できる可能性が生まれます。
一方、新たな雇用により総体的な管理工数や人件費コストが上がってしまう懸念が生じます。
働き手にとっては、仕事をシェアすることで背負っていた負荷も分散され、労働時間の削減→プライベートな時間が持てるようになります。
一方、一人の働き手にとって労働時間の減少は賃金の減少に繋がる懸念が生じます。
このように、ワークシェアリングは企業側も働き手側にとっても一長一短があるようです。
新聞販売店とワークシェアリング
では、このワークシェアリングという考え方を新聞販売店に取り入れることは可能なのでしょうか?
新聞販売店で働く人は、正社員、アルバイト、パートなど雇用形態も様々ですが、特に正社員の場合、一人で担う仕事量は結構多くあります。
ますは、正社員として働く人の一般的な業務スケジュールを見てみましょう。
- ~1:30前:出勤
- 1:30~2:30:朝刊へのチラシ入れ
- 2:30~5:30:朝刊配達
- 6:00~12:00:休憩
- 13:00~14:00:事務作業
- 14:00~16:00:夕刊配達
- 16:00~19:00:集金や営業まわり
このように、朝、夕の新聞配達時間を軸にチラシ、事務作業、集金、営業まわりと言った多様な業務をこなしていることがわかります。
朝刊配達が終わると、午前中はまるっと休憩時間を挟むことから1日2回寝て起きると言うような、変則的なタイムスケジュールが特徴的です。
もちろん、これが長年定着してきた新聞配達のワークスタイルと言ったらそれまでですが、今の時代で言う「ワークライフバランスが図られているか?」という点においては、「???」と言う気もします。
そこで、これまで一人の社員が抱えてきた業務を分け合う、つまりは「ワークシェアリング」の視点でシミュレーションしてみたいと思います。
まず、一般的な社員の1日の業務スケジュールをあらためてみると、業務を線引きしやすいのは午前中の長休憩時間の前後です。
この前後で仮にAさんが一人で担ってきた業務を、あらたにBさんを加えてシェアすると次のような2つのタスクに分けることが出来ます。
【Aさんの業務タスク】
- ~1:30前:出勤
- 1:30~2:30:朝刊へのチラシ入れ
- 2:30~5:30:朝刊配達
- 6:00~11:00:事務作業や営業活動など
【Bさんの業務タスク】
- ~14:00前:出勤
- 14:00~16:00:夕刊配達
- 16:00~20:00:集金や営業活動など
これはあくまでも一例ですが、業務をシェアすることによって一人にかかる負担を軽減できますし、新聞販売店の側でも一様のメリットが生まれます。
新聞販売店のワークシェアリング効果は?
以前から新聞販売店は慢性的な人出不足という課題を抱えています。
この要因の一つに、変則的業務や長時間業務と言った労働条件が考えられます。
働き手にとっても、「一人ですべて抱え込むのは大変だな~」とか「自分の時間が作りにくいな~」などの理由で敬遠する人もいるはずです。
そこでワークシェアリングを導入すると先に示したシミュレーションのように、業務タスクごとに労働条件を分けて雇用することが可能になります。
そうすると働き手の側も、「これだったら負担がないかも!」とか「時間のやりくりがしやすくなるかも!」と言った声も聞こえてくるはずです。
新規に新聞販売店で求人募集を行うとしても、新たな働き手の掘り起しも期待されると言うわけです。
まとめ
これからの時代は、ワークシェアリング、ワークライフバランスと言った新しい働き方、考え方が浸透していくことは間違いないところでしょう。
仕事を分け合う(シェアする)ことで、働き手の多様なニーズに企業の側も対応しやすくなり、雇用面でも様々な効果をもたらしてくれるはずです。
ただし、既存の社員がこれまで行ってきた仕事をワークシェアリングの導入によって、「仕事が奪われる」ことがあってはいけません。
フルタイムが可能な方はフルタイムで、シェアタイムが良い方はシェアタイムで、と言ったように、それぞれの働き手のニーズに合わせた働きたいスタイルに柔軟に対応できる環境づくりが大切だと言うことです。