近年、ニュースや報道を通じてこんな言葉をよく耳にします。
「これまで経験したことない…」
「100年に一度の…」
「観測史上最大の…」
「命を守る行動を…」
もうお分かりだと思いますが、これらは気象や天候の「異常さ」や「危険度」などから、甚大な被害に発展する(おそれがある)からこそ用いられる表現です。
確かに全国各地で多発する台風や大雨による河川の氾濫、浸水、土砂崩れ、高波、高潮、暴風、落雷、突風など、その異常性には誰もが実感しているところでしょう。
そうなると、個々人が常に自然災害に対し最大限のリスク対策を行っていく必要があります。
また、事業者にとっても自然災害への対応は、喫緊の経営課題として取り組んでいくことが求められています。
問われる事業者の責任
「BCP(ビー・シー・ピー)」という言葉をご存知でしょうか?
これは「Business Continuity Plan」の略称で、日本語の意味は「事業継続計画」を表すビジネス用語です。
中小企業庁による定義は、次のようなものです。
やや表現が難しいので、これを簡単に言えば「有事(=非常事態)の際に、わが社はどのような行動を取るべきかを取り決めること」です。
異常気象による災害も、立派な「有事」であり、事業者にとっても経営上の大きなリスクとなり得ます。
2018年9月、関西地方を襲った台風21号の際、次の動画がSNS上にアップされて物議を醸(かも)したは記憶に新しいところです。
(台風の暴風でバイクもろとも倒れる宅配ピザのドライバー=1000mg(@1000mg)さん提供)
また、2020年7月、九州地方を襲った集中豪雨で鹿児島県の南さつま市の新聞販売店に勤める63歳の男性が、朝刊の配達時に行方不明になるという出来事もありました。
この2つの事例から考察されることは、「何故、このような状況で配達をさせるのか?」「会社は何を基準にどんな指示を配達員に出したのか?」と言うことです。
その基準があいまいだったり、その人任せで業務を遂行させたり、判断を見誤ると「天災」から「人災」に変わる可能性も十分あり得ます。
企業には「社会的責任」の観点も含め、従事者への「安全配慮義務」を背負っています。
これを怠ると、安全配慮義務違反となり責任問題へ発展しかねません。
昨今では、これまでの常識を覆す大規模な自然災害を含めた有事が頻発する世の中になってきているため、この「BCP」という概念は、企業経営にとって今後ますます重要性が高まるはずです。
有事に対する判断基準とは
では、このような甚大な被害に発展する(おそれのある)災害等に対して、事業者(新聞販売店)はどのような判断基準を設けるべきなのでしょうか。
ここでは「配達業務」という側面で考えてみましょう。
まず念頭にあげられることは、配達員は「確実に配達すること」を使命とし、ちょっとやそっとの雨風なら何のその、配達をまっとうすることが「美学である」という考えを持つ人も多くいるはずです。
しかし、その考えで「有事の際は各人の判断に委ねる」という業務方針では、これからは「命取り」になることは言うまでもありません。
ですので、「このような事態に、こう備える、こう対処する」というガイドラインを会社側で設けることが必要になるわけです。
例えば、このようなことです。
- 最新ハザードマップを入手し危険個所を日頃から全従業員に把握させる
- 風速8m以上予見される場合は配達を中断する
- 警戒レベル3になったら業務を中断する
- 特別警報が発令された場合は直ちに業務を中止し、命を守る行動を最優先する など
また、新聞販売店ではありませんが、滋賀県にあるCOOP(コープ)の宅配サービスでは、台風接近にともなう活動の際は次のようなガイドラインを取り決めているようです。
<県内または事業活動地域が「暴風域の予報円に入る」と予見された場合>
- 最接近予想時刻の前後1時間半(合計3時間)は配達を中断する
- 台風通過後、状況により配送を別日に延期する、または中止する場合がある
自然有事の際、物事を的確に判断するためには「情報」が何よりも大切になってきます。
国土交通省の防災情報提供センターでは、リアルタイムの気象データや災害情報など提供しています。
また、民間においても企業向け災害情報サービスが利用できるほか、災害情報アプリなど、今では様々ルートから「災害情報」が入手できますので準備を整えておくことが得策です。
まとめ
近年にみられる異常気象、自然災害の状況は決して一過性で済まされるものではなく、これから常態化することを念頭に入れるべきかもしれません。
先にPCBの概念について触れましたが、いつ何時有事が襲ってくるかわからない時代です。
経営のあり方、事業の方針、業務のやり方などについて改めて見つめなおし、平時から「備えておく」ことが事業者としての責務であり、またそれらが強く求められる時代に変化したと言うことかもしれませんね。