「引き継ぎ」と「営業権利」について
新聞販売店の「引き継ぎ」とは、新聞を販売する「営業権利の譲渡」を指しています。
新聞販売店の活動できるエリアは、全国で細かく決められており、簡単には縮小や拡大ができません。
そこで、前任の経営者が辞めたり、他地域に移動するときに新聞販売店の「引き継ぎ」が行なわれます。
つまり、前任の経営者から営業権利を買い取ることで、その地域で独占的に新聞を販売することが可能になるわけです。
但し、営業権利は好き勝手に譲渡できるものではなく、新聞社が必ず介在します。
それでは、営業権利を取引する場合、相場はどのくらいなのでしょうか。
通常、営業権利金は首都圏で「1部あたり1万円」が慣行で、例えば引き継ぐ店舗の取扱部数が3,000部の新聞販売店の場合、営業権利金(代償金)も3,000万円ほどになります。
代償金の引き渡しは、現金又は小切手のみとなっており、原則一括での支払いとなります。
「引き継ぎ」と「新規開業」について
「引き継ぎ」によって、新たに新聞販売店を開業するケースを考えてみましょう。
普通、新規事業(起業)を行なおうとした場合、当面の売上を願望ではなく、正確に試算することは大変難しいとされます。なぜならば、実績がないため算定根拠が打ち出しずらいためです。
一方、新聞販売店が「引き継ぎ」によって新たに開業した場合は、当面の売上がある程度予測ができるのです。
なぜならば、新聞購読者(顧客)をそのまま引き継ぐ形なので、同時多発的に「解約」でも発生しない限り持続的に事業を見通せるわけです。
また、事業の特性を見た場合、「新聞」という商品は、他の物品を販売するのと違い、勝手に値上げや値引きが出来ないので、他店との価格面での競争はありません。
つまりは、一契約に対する単価が一定なため売上変動が起きづらいのも魅力の一つです。
「引き継ぎ」と「開業資金」について
新聞販売店のもう一つの事業特性は、現金商売(当月の売上で当月の支払いを行なう)であると言う点です。
「引き継ぎ」による開業には、営業権利金(代償金)という高額の資金が必要になりますが、初月から「引き継ぎ」による売上が計上できるため、開業当初から資金繰りで切迫することは稀です。
また「引き継ぎ」には店舗や新聞販売店で必要な備品(バイクetc.)なども前任の経営者から引き継ぐことが出来ます。
このように、新聞販売店を「引き継ぎ」により開業する場合、一番のネックが「引き継ぎに伴う高額な代償金を用意すること」だと思いますが、どのようにして資金を確保しているのでしょうか。
新聞販売店を独立開業するパターンで多いのが、勤めていた新聞販売店の財形貯蓄制度を利用して、その資金を元に独立するというのが一般的です。
首都圏で新聞販売店を開業する場合の自己資金の目安は、およそ1,000万円と言われています。
不足資金は、借入調達となりますが、主となる取引先の新聞社、自分が勤めていた会社、もしくは銀行など金融機関からの借入金で賄っていることが多いようです。
「引き継ぎ」と「配達業務」について
新聞販売店の引き継ぎは、前任の経営者から全てを引き継ぐわけですが、一番大変で神経を使うことは、「配達業務の引き継ぎ」と言われています。
新聞は毎日発行されているので、引き継ぎの日に前任者から後任者に、配達業務も同時に引き継がれます。
例えば、月末日までは前任者が配達して、翌1日の朝から後任者が配達するような形になるわけです。
もちろん顧客に迷惑は掛けれないので、初めて配達する地域でもミスは許されません。
引き継ぎ日当日の配達は、ものすごい緊張感に包まれるそうです。
このように、新聞販売店は「引き継ぎ」を繰り返すことで、店舗拡大を図っていると言うわけです。