社)日本新聞協会の調べによると、2018年10月時点で全国の新聞販売店に従事する労働者の数は、28万6,384人となっています。
そのほとんどは、自分が所属する新聞販売店に雇われて働いており、その対価として「給与」が支給されるわけです。
しかし、新聞販売店で働くスタッフにとって、万一勤務中に事故やケガをして働けなくなったことを考えると、生活面がとても心配になりますね。
特に、新聞配達の仕事はバイクや自転車、時として車も乗り回して仕事をするわけですから、交通事故の危険リスクを常に背負っているわけです。
また交通事故だけではなく、配達中に階段から足を踏み外したり、濡れた路面に足を滑らせての転倒など、予期せぬケガを負うことだってありえます。
そんな万一の時、労働者にとって力強い味方になってくれるのが「労災保険」なのです。
労災保険とは何か?
労災保険とは、正式名称「労働者災害補償保険」の略称で、いわゆる日本の社会保険の柱の一つである「労働保険」に組み込まれており、もう一つの「雇用保険」の2つから構成されています。
労働保険は、雇用や労働に特化した保障制度で、失業や退職などに由来するものが「雇用保険」、勤務(仕事)中に発生した事故などが由来で、ケガや病気にかかってしまったときにカバーするのが「労災保険」です。
労災保険は誰が加入するの?
さて、この労災保険は一体誰が加入するのでしょうか?
実は、労災保険は個々の労働者が加入するのではなく、一人でも従業員(正社員、パートやアルバイト、日雇いも含む)を雇い入れた場合に事業所(つまり、新聞販売店)が加入しなければならない仕組みになっています。
保険料の払い込みも事業所が持つので、従業員が負担することも給与から天引きされることもありません。また、業務に従事した時点から労災保険の適用が受けられます。
どんな補償が受けられるの?
では、労災保険は一体どんな補償をしてもらえるのでしょうか?
これには「業務災害」と「通勤災害」と言う2つの考え方があります。
業務災害とは、業務(勤務)中に発生した業務に由来する事故に適用されるものに対し、通勤災害は通勤途中(つまり、自宅を出てから会社に着くまで)に発生した事故に適用されます。
労災と認められると、ざっと次のようなケースで補償(給付)が受けられます。
(本人に対して)
- 病院に行って治療費がかかった
- 長期間治療が必要な重い状態になった
- 治療(療養)で会社を休んだ
- 重いケガや病気で後遺症を患った
- 介護が必要になった
(遺族に対して)
- 労災が原因で本人が死亡した
- 本人の死亡により葬儀費用がかかった
- 本人の死亡、重い障害で子供の学費が払えなくなった
労災が発生した!さて、どうする?
あなたが不幸にも、通勤や業務中に労災に見舞われた場合ついて説明しておきましょう。
まず、労災の申請窓口ですが、これは所轄の「労働基準監督署(=労基署)」になります。
最寄りの労基署は、「都道県労働局所在地一覧ページ」ら確認ができます。
次に申請者ですが、労災保険の加入自体は事業者の義務になりますが、労災申請は労働者本人が行います。
ここで注意したいのが、たとえ労災が発生した場合でも申請に事業者(会社)が積極的に協力してくれるとも限りません。
ですから、決して人まかせにするのではなく、本人が率先して動くことが得策かもしれません。
さて、肝心の申請方法ですが、それぞれ労災の事案によって給付を受ける申請(請求)書が異なります。
例えば、「業務中にケガをして病院に行って治療費がかかった」などの場合、「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式5号)」という書式を使用します。
必要事項を記入し、事業者(会社)に証明してもらってから病院や薬局などに持っていきます。
そこから労基署へ書類が渡りますので、本人は自己負担なく治療や診断が受けられることになります。
また、労災給付を受けるために申請書以外にも添付書類の提出も求められます。
その内容に基づいて労基署が調査し、最終的に労災と認められれば給付金が支給されるわけです。
どんな書類が必要になるかは事案によって違います。
まず、病院ですが、労災の場合は各地域にある労災保険指定医療機関に行くことになります。指定病院については「労災保険指定医療機関検索ページ」で確認することができます。また、普段病院に行く際には「保険証」を提示するかと思いますが、労災由来では健康保険証は使わないことになります。もし、労災と知らずに健康保険証を使ってしまった場合は、治療費の返還を行ったあとに労災申請の手続きを行うので少々面倒になります。
まとめ
一つ知っていただきたいのが、労災は「無過失責任」という考え方があります。
これは、通勤時や業務上に発生した事故や災害による労災対象は、会社側の落ち度があるか、ないかは関係ないと言うことです。
労災保険は、会社の業務に従事するすべての労働者に与えられた補償制度です。
もちろん、使わないことに越したことはありませんが、「万一の時」にカバーしてくれる労災保険を知っておくだけでも、仕事に対する不安や心配も和らぐことでしょう。
また、いざ労災を使おうとなると、やや手続きが複雑になります。
日頃から、会社側と連携を取り「労災」について話をしておくことをおすすめします。
(参考)
労災に関する各種相談:厚生労働省の労災保険相談ダイヤル:0570-006031