2020年は、世界的にみても新型コロナウイルスに始まり新型コロナウイルスに終わった年と言っても過言ではありません。
しかも、年をまたいだ2021年に入っても全国の新規感染者数は連日のように記録を更新し、とうとう1月8日に東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県に2回目となる緊急事態宣言が発令されました。
そのようなコロナ渦が猛威を振るう現在の世の中で、「新聞」を取り巻く環境は一体どうなっていくのでしょうか?
そこで、新聞販売店.comでは現状の気になる動きやトレンドなどから、今後の展望について考察してみたいと思います。
2020年の最新発行部数は?
2020年の新聞発行部数について、同年12月22日に(社)日本新聞協会から発表がありました。
それによると、2020年10月時点において協会加盟の日刊116紙の総発行部数は、3509万1944部で前年比7.2%の減少となり、この1年間で実に271万9304部が無くなった計算です。
この発行部数の減少自体、何も今に始まったことではなく、ここ20年間は右肩下がりが常態化しています。そんな中でも注目したいのが、「減少率の増大」です。
△7.2%という数字は、2018年-2019年の△5.2%と比べ△2%増加した形です。
この減少率増大の一因に、コロナ渦が影響したことを差し引いても、やはり「新聞離れ」の波が大きくなっている感は否めないところです。
アメリカの新聞事情
全世界で猛威を振るう新型コロナでも、特に深刻な状態が続くアメリカの新聞事情について触れてみましょう。
アメリカの新聞は、日本の読売、朝日、毎日と言ったいわゆる全国紙よりも地域ごとのローカル紙が中心で、その数、数千種類が発行されていると言われます。
アメリカのある大学研究員の報告で、この15年間で4分の1にあたる2000紙以上が廃刊し、発行部数も4割以上減少しているということです。
このことから、アメリカの新聞業界においても大変厳しい状態であることは間違いありません。
そんな中でも、アメリカの新聞社1社が注目されています。
それは、日本でも知名度の高い「NYタイムズ紙」です。
NYタイムズ紙は、抜本的な事業戦略の転換を図り、アプリやニュースメールで世界中に記事を配信することでデジタルメディアの変革に取り組んでいます。
その結果、2020年7~9月期にはデジタル関連の収入が紙媒体からの収入を上回り、同年9月期の電子版の有料読者数は前年同月末比46%増だったそうです。
同紙の今後のビジョンでも、2025年には購読者1,000万人とする目標を掲げており、前倒しできる勢いで伸びている点からデジタル化の変革モデルとしても注目されているようです。
Googleがいよいよ動く?
Android版「Google News Showcase」
NYタイムズ紙のように、新聞業界の方向性は「デジタライゼーション(=デジタル化による生産性向上)」が今後のカギとなることでしょう。
そんなデジタル化の波に拍車をかける発表が、米グーグル社からあったことをご存知でしょうか?
2020年10月1日に米グーグル社は、「グーグル・ニュース・ショーケース」と称した、新しいニュース配信提供サービスを開始すると発表しました。
これは、グーグル社からメディア各社に「パネル」を提供し、各メディアはそのパネルを活用した独自の記事を掲載してグーグルに提供、将来的には検索エンジンにも表示される仕組みです。
この注目点は、記事を提供する各メディアの有料コンテンツの一部をグーグル側で報酬を支払うことです。
発表ベースでは、3年間で総額10億ドルもの予算を打ち出しています。
2020年12月時点でドイツやブラジルなど7カ国のメディアと取り組みを始めており、近く日本のメディアにも拡大されるとの事です。
新聞販売店の行く道は?
このように、日本の新聞業界は「デジタライゼーション」を目指した改革に力を注ぎこむことでしょう。
では、そこに「新聞販売店」はどのように絡んでくるのかです。
新聞販売店の本質は、「紙の新聞を各家庭に届けること」です。
そうすると、新聞離れによる発行部数の減少に加え、デジタル化の波により今のままでは事業が成り立たなくなることは明らかです。
しかし、新聞社にとって長年築き上げてきた新聞販売店による配達網をそう簡単に切り崩すはずがありません。
読売新聞社によると、今後デジタル化を推進しながら「紙新聞をセットにする」という考え方を打ち出しているようです。
デジタル化が新聞社の社運をかけた方針であるならば、それに新聞販売店も巻き込むことは一つの方法です。
例えば、デジタル版を契約したユーザーには紙の新聞も無料で届ける、そして紙の新聞にはこれまで通りチラシなどを折り込んで配達すれば、販売店の収益も確保できるでしょう。
デジタル紙面のアカウントを家族で共有できるようにすれば、追加費用も発生せずに若い人はデジタルで、年配の方は紙面で新聞を読めるようになります。
このようにすれば現在の読者を大切にしつつ、新たな新聞読者を獲得することにもつながるでしょう。
まとめ
新聞業界を取り巻く環境は厳しさを増していますが、世界的に「新聞のデジタル化」は今後ますます精度が磨かれていき、世の中に深く浸透していくと思われます。
しかし、日本は単にデジタル化を推し進めるだけでなく、日本ならではの「新聞配達網」を活かさない手はありません。
新聞社と新聞販売店の独自融合により、あっと驚くようなビジネスモデルが創出できるよう期待したいものです。