新聞販売店は戦国時代さながら?

B!

新聞販売店の経営は誰でも出来るわけではありません。
活動したい特定地域において、取り扱う新聞社と協議し、正式な契約を取り交わす必要があります。

そこではじめて、地域での独占販売が認められていると言うわけです。

新聞社と取り交わす契約には、色々と条件があります。
まず、テリトリー内で新聞を販売できるのは、契約した販売店(一部の地方紙やコンビニなどを除く)だけです。
新聞の販売する価格は決められており、任意の価格で販売することはできません。
販売エリアは厳密に決められていて、隣接しているエリア外に新聞を配達することは契約違反となります。

基本的に、全国すべて陣地(そのエリアで新聞を販売する権利)は割り当てられており、自店の販売エリアを拡大しようとすると、違う銘柄(新聞)を扱っている競合他店だけではなく、同じ銘柄の新聞を販売していて隣接している他店とも陣地の奪い合いも起こります。

独立した新聞販売店が、自店の販売エリアを大きくしていく方法は大きく次の3つです。

  1. 隣接している同業他店が辞める、又は他地域に移動した場合に空いたところを譲り受ける(つまり、「その地域の販売権利を買う」と言うこと)。
  2. 現在の新聞販売店を売却して、もっと大きい規模の他のエリアの新聞販売店に移動する(この場合も、その地域の販売店主が辞めたりして空きがある場合に限る)。
  3. 同じエリア内の競合他店が辞たり、規模縮小で一部の銘柄を譲り受ける。

このように、既存の販売エリアだけでなく、他の地域へ拡大しようとする場合、そのエリアの店主が辞たり、移動するなどの要件が揃わなければ不可能です。
また、新聞販売店の移動や拡大には、新聞社の承諾がなければ自分の都合だけではどうすることもできない仕組みです。

しかし、全国の新聞販売店の中には、少しでも自分の城(陣地)を大きくしたいと戦国武将のように虎視眈々と画策している店もあるはずです。

それでは、一体どのような構図で画策を企てているのでしょうか。
そのあたりを探っていきたいと思います。

全国に新聞販売店は、16,378店(2017年10月:新聞協会経営業務部調べ)あり、経営規模も大小様々です。
基本的に、新聞販売店の経営規模の大きさは、下記のように取扱部数でランク分けしています。

 

取扱部数 ランク
1,000部~3,000部 Eクラス販売店
3,000部~5,000部 Dクラス販売店
5,000部~7,000部 Cクラス販売店
7,000部~10,000部 Bクラス販売店
10,000部~ Aクラス販売店

 

単純計算で、取り扱い部数が2,000部のEクラスの新聞販売店の場合、全国紙朝夕刊の月極価格が1部約4,000円として、売上は次のようになります。

4,000円×2,000部×12か月=約9千6百万円(新聞売上)

 

これ以外に新聞の折込広告の売上も加味します。

折込広告の1枚あたりの単価は地域によって様々ですが、首都圏の場合で1部あたり1ヶ月約1,000円と仮定すると次のようになります。

 

1,000円×2,000部×12ヶ月=2千4百万円(折込売上)

 

上記(新聞売上)と(折込売上)合わせると2,000部の販売店の年商は、およそ1億2千万円です。

独立したての店主は、まずEクラスの販売店からスタートして、統廃合を繰り返しながら、自分の城を大きくしていくのが定石です。
これから先、新聞を購読する人は年々減少傾向にあるので、体力のない新聞販売店は生き残ることが厳しい見通しです。

その中で、「いかに、辞める販売店をどんどん吸収して、自分の城を大きくしていくか?」を企てていくわけです。

これは、既存の販売店に限った事でなく、販売店で働くスタッフにも、独立開業のチャンスが巡ってくるかもしれません。
戦国武将のように活躍して、自分の石高(給料や待遇)を上げていくのか?
または、信長のような店主のもとで働いて、秀吉のような立身出世を目指すのか?

今まさに新聞販売店は、群雄割拠の戦国時代さながらの様相と言えるでしょう。

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