大切な購読者を掴んで離さない!リレーションシップ戦略

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新聞販売業界に共通する課題と言えば、「購読者の減少をいかに食い止めるか?」です。
購読者が少なくなると言うことは、同時に「売上が下がる」ことを意味します。

もし、このまま売上が下がり続ければ、事業も縮小の一途をたどり、挙句の果ては「廃業」するしかなくなります。
これに危機感を持った新聞販売店は、購読者減少の歯止めをかけるべく、「生き残り戦略」と称し、様々な取り組みを行ってきました。

その多くは、戦略の要諦(ようてい)を、「他紙読者」と「無購読者」に狙いを定め、新規購読者の獲得を目指し、次々とアウトバウンドを仕掛けていったのです。

しかし、結果はどうだったでしょうか。
時代の流れとともに、日中の不在化、個人情報やコンプライアンスの高まりなどからターゲットに容易にアプローチすることが困難になり、非効率な営業手法に「拡張の限界」がやがて訪れます。

そうすると、当初打ち出した「生き残り戦略」も根本から見直す必要があります。
そもそも売上とは、「客数×客単価」という普遍的な方程式で成り立っています。
そこで注目すべきは、「客数」です。

購読者の減少は、イコール(=)「客数の減少」を意味します。
つまり、これに歯止めをかけるには、まずは「既存の購読者数をいかに維持させるか」が最優先課題として浮上します。

これまで新聞販売店の視点は、「いかに新規購読者を増やすか?」であり、既存購読者に対して十分なフォローをしてきたとは正直思えない節があります。
その結果として、他紙への切り替えや解約をつくり出し、文字通り「客数減少」を加速させる事態に繋がったことは否定できません。

新戦略はリレーションシップ

そこで、新たな生き残り戦略として浮上するのが「既存客へのリレーションシップ」です。
Relationship(リレーションシップ)とは、「人と人との繋がり」を意味します。
この戦略の肝(きも)は、「既存購読者」に対する「良好な関係」を構築することで、「客数減少に歯止め」をかけ、さらに「持続的な収益」を生み出すと言うことです。

これにいち早く気づき、「リレーションシップ」に取り組んだことで、業績拡大に成功した新聞販売店の実例を一つご紹介しましょう。

奈良県にある新聞販売店の経営を引き継ぐことになったSさんは、かねてから新聞業界で行われていた”バラマキ型”の新規獲得営業に疑問を持っていたそうです。

「市場(パイ)が縮小している中で、新規のシェア拡大はやがて限界が来る…」

そう考えたSさんは、「うちでは既存のお客様を大切にしていこう!」というスローガンを掲(かか)げました。
そこで、次のような施策に打って出ます。

  • これまで新規獲得のために配っていた商品を、購読世帯にも配布すること
  • 「まごころ予算」という仕組みを取り入れ、自店のスタッフ一人一人に月2,000円の予算を計上すること
  • スタッフの裁量で、エリア内の既存顧客に対して「心づくし」に取り組むこと

このような施策のもと、スタッフのMさんは早速「あること」が頭によぎったそうです。

「確か…この前集金に行った時、鈴木さん宅のおばあちゃんが膝を痛めていたよな?」
「よし!まごころ予算で湿布を買って新聞と一緒に届けてあげよう」と。

このように、経営者Sさんが打ち出したスローガンと施策のもと、従業員スタッフ一人一人が「お客様について考える意識と気遣い」が徐々に浸透し出したのです。

それだけではありません。
経営者Sさんは、更に次の一手を投じました。

それは、軽印刷機を導入し、スタッフや自身の思いなどを綴ったレターを毎日したため、新聞と一緒に配達することです。

その手紙は、新聞販売店スタッフの「人となり」が垣間見える内容で、実際、毎日楽しみにしているという購読者からは、「旅行などで不在にする間、新聞はいらないがレターは毎日届けてほしい」という依頼もあったほどです。

このような地道な取り組みでリレーションシップの強化に努めた結果、引継ぎ当初の購読世帯1,190件から、15年後には10倍の12,000件にまで拡大することになったそうです。

まとめ

リレーションシップとは、「お客様との結びつきをいかに築いていくか?」が発想の原点です。
言葉が少し乱暴かもしれませんが、これまで新聞販売店の姿勢は「釣ろうとする魚にはエサをバラまくが、釣った魚にエサを与えない」的な傾向があったのは否めません。

そこにリレーションシップの息吹を吹き込むことで、「釣った魚をどう育てて増やしていくか?」という発想が生まれます。


「新聞」という商品自体は、誰が配達しても中身が変わるわけではありません。
しかし、そこに販売店やスタッフの人となり、気遣い、思いやりといった「心づくし」が加味されることで、「お客様と新聞」だけの関係から、「お客様と新聞販売店(スタッフ)」というリレーションに変わります。

One to Oneのきめ細かなサービス、コミュニケーションを行うことによって、お客様からの信頼や好意、愛着を獲得することができ、結果として業績拡大につながるというわけです。

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