新聞販売店で働く人のための納税講座

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働く人たちは、仕事の対価としてお金(収入)を得ます。
しかし、ただ一方的にお金を受け取るだけで済まないのが社会の仕組みです。
収入を得た人は、所得に応じて「税金」を納めなければなりません。
では、その税金は一体どのように納めるのでしょうか?
新聞販売店で働く皆さんは、どのようにすればよいのでしょうか?
ということで、今回は会社に勤めて給与収入を得ている人たちの「納税」の仕組みや方法について解説していきましょう。

収入に関わる税金とは?

ひとえに「税金」と言っても、その種類や目的が多数存在します。
その中で、給与収入者に直接かかわる代表的な税金が「所得税」や「住民税」です。
では、所得税と住民税は何が違うのかと言うと、所得税は国税住民税は地方税と言う形で、それぞれ納付先が異なります。

所得税 ⇒ 国に納める税金
住民税 ⇒ 都道府県と市区町村に納める税金

つまり、給与収入者は、原則、「所得税」と「住民税」をそれぞれ納付する必要があるわけです。

所得税額はどのように決まる?

所得税を納める金額を算出するためには、まずは「給与収入」「給与所得」「課税所得」の3つを理解する必要があります。

  1. 給与収入 ⇒ 1年間に得た月給や賞与(ボーナス)など合計した総収入額
  2. 給与所得 ⇒ 上記、給与収入額から給与所得控除額を差し引いた金額
  3. 課税所得 ⇒ 上記、給与所得額から所得控除額を差し引いた金額

(計算式)所得税額=課税所得×税率(-税額控除※)

少しわかりづらいかもしれませんが、要するに「一年間にすべて得た収入(年収)から必要経費(控除額)を差し引いて残った金額(課税所得)に一定税率をかけると所得税が決まる」と言うわけです。
なお、税額控除※とは一定要件を満たしている人が、所得税額から直接控除することができるもので、例えばマイホームをローンで支払っている方でしたら、「住宅ローン控除」などが当てはまります。

住民税額はどのように決まる?

住民税とは、自分が住んでいる地域(原則、住民票の住所)の都道府県および市区町村にそれぞれ納める税金を合わせた総称です。
人によっては「市県民税」と言い換えれば、馴染みがあるかもしれません。
住民税を納める金額を算出するためには、「所得割」と「均等割」の2つを理解する必要があります。

  1. 所得割 ⇒ 所得金額から所得控除を差し引き(=課税所得)して一定税率を掛けた金額
  2. 均等割 ⇒ 所得にかかわらず定額で課税される金額

(計算式)住民税額=所得割+均等割

このように、住民税は「所得割」と「均等割」の合計した額になります。
所得割は、先に示した国の「所得税」の考え方に似ていますが、「均等割」は収入(所得)にかかわらず一定額が加算されるところが大きな特徴かもしれません。
また、所得税との大きな違いは「住民税は確定納税」であるという点です。
つまり、1年間の所得が決まったうえで課税されることから、前年分を翌年に納税するという仕組みです。
なお、住民税の詳しいことは、ご自身の地域の各自治体ホームページなどで確認してみましょう。
検索キーワード:「○○(←自治体名)」+「住民税」

税金はいつ、どのように納めるのか?

所得税や住民税の基本的な考え方がわかったところで、それぞれの税金はいつ、どのような形で納付するのかを見ていきましょう。

所得税の納付方法は?

通常、給与収入者(=サラリーマン)であれば、所得税は毎月の給与から「天引き」されていることが一般的です。
しかし、本来は一年間の総収入(年収)が確定してはじめて課税されるのですが、年の途中ではその年の正確な年収がまだ確定されていません。
そこで、毎月の収入に応じて暫定的(ざんていてき)に税額を会社側(=給与支払者)が「預り金」として天引きしているわけです。
天引きされた金額(預り金)は、会社側が代わりに国に納付しています。
これらの一連の仕組みを「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」と言います。

年末調整とは何か?

給与をもらっている人であれば、毎年11月~くらいから会社から控除申告書が各自に配布されたりします。
これらの書類は、一年間に各自が生命保険料を支払ったり、扶養家族の変化などを申告することで、収入から控除される金額を決めるためのものです。
そうすると、一年間の総収入(年収)と控除される金額が年末には判明するので、先に示した所得税の計算式により各自が一年間に納めるべき所得税が確定されるわけです。
しかし、給与収入者であれば毎月の給与から所得税が暫定的に天引きされています。
この一年間に天引きされた税額の合計と年末に判明した一年間に本来納めるべき税額に差異が生じることがあります。
天引き額が多い場合は「還付金」として返金され、少なければ「追徴課税」として納めることが必要になるわけです。
通常、これらの手続きは、給与を払っている会社が行っており、この一連の仕組みを「年末調整(ねんまつちょうせい)」と言います。
年末調整を行って確定させたものが、「源泉徴収票」という形で会社から渡されるというわけです。

住民税の納付方法は?

住民税の納付方法も所得税と一緒で、給与収入者(=サラリーマン)であれば毎月の給与から「天引き」されるのが一般的です。
つまり、毎月会社側で各自の住民税を「預り金」として徴収し、本人に代わって納めているというわけです。
これらの納付方法を「特別徴収(とくべつちょうしゅう)」と言います。
住民税の額が決まると、各自治体から「住民税決定通知書」が発行され、会社を経由して本人に渡される形になります。

住民税もう一つの納付方法とは?

住民税の納付には、特別徴収ともう一つ「普通徴収」という方法も存在します。
普通徴収の場合、毎月の給与から住民税が天引きされない形なので、本人が直接納付する形になります。
普通徴収の場合、毎年6月頃に各自治体から「納付通知書」が届きます。
納付は、年間住民税を4回(6月、8月、10月、1月)に分けて分納する仕組みになります。

給与収入者の原則論

給与収入者の場合、所得税は「源泉徴収」、住民税は「特別徴収」という形で給与から天引きされ、年末調整によって納税額を確定させるのに、会社が窓口になって行うのが通常のやり方です。
しかし、これはあくまで「原則論」であり、実際には各自の入退社の時期、雇用形態、勤怠、収入額や収入手段など様々な要因により、これまで解説したような「原則論」があてはまらないことも多々あります。
その場合、税金を納める別の方法が「確定申告」です。

確定申告とは

ここで言う確定申告とは「所得税」に関するもので、その年の一年間(1/1~12/31)に得た収入から国に納める税額を計算し、翌年の2月16日~3月15日の間に税務署に申告・納税するための一連の手続きです。
あくまで「所得税」を対象としているので、「住民税も一緒?」と混同しないように注意しましょう。

新聞販売店で働く人の納税は?

これまで、一般的な所得税や住民税の納税の仕組みや方法について取り上げました。
ただし、例え給与収入者であっても、「確定申告は個人事業者が行うもので、我々は無関係?」と思っている方もいるかもしれませんが、そうではありません。
では、「どのような要件だと確定申告が必要なのか?」、新聞販売店に働く人を例にいくつか取り上げてみましょう。

年末調整をしていないケース

仮にパートやアルバイトで働く場合を考えてみましょう。
パートやアルバイトで得た収入が月額8万8,000円を超えるようですと、正社員と同じように給与の額に応じて所得税が「天引き」されることがほとんどです。
ただし、年末調整についてはパートやアルバイトは「対象外」としている新聞販売店もあります。
その場合、例え毎月の給与から税金が天引きされていたとしても、その年に本来納めるべき税額が計算されていないので、確定申告が必要です。

複数から収入を得ているケース

仮に本業を持っていて新聞販売店で副業や兼業で働いているような方ですと、年間20万円を超えて収入を得ている場合、本業の収入と新聞販売店で得た収入を合算した形で確定申告が必要になります。

1年間で入退社したケース

例えば、その年の1月~8月までA店に勤めていて、9月からB店に転職し12月末時点で在籍していると言うケースがあったとします。
その場合、A店の退職後、働いた期間の源泉徴収票をA店から受け取っておきます。
現在の所属はB店ですから、A店の源泉徴収票をB店に渡して年末調整してもらえれば確定申告は不要です。
しかし、B店がA店の分までやらないと言った場合は、確定申告する必要があります。

その他、確定申告が必要なケース

上記のケース以外で、自分の身の回りで次のようなケースがあった場合は、確定申告が必要です。
① 親などから110万円を超える贈与を受けた
② 不動産を相続した、もしくは売却した
③ 株の売買や投資で源泉徴収されていない
④ 保険満期で一時金を受け取った
また、必ずしも義務ではありませんが、次のようなケースで確定申告をした場合、天引きされた税金が戻ってくる場合があります。
これらは、自己申告しない限り控除もされないので注意しましょう。

① 家族全員分の医療費が年間10万円を超える場合(医療費控除)
② 住宅ローンを組んで1年目の場合(住宅ローン控除)
③ ふるさと納税を行っていた場合(寄附金控除)
④ 配偶者と離婚、死別した場合(寡婦/寡夫控除)

まとめ

一つの会社に所属し給与収入だけで生計を立てている方ですと、納税は「天引き」⇒「年末調整」と会社が窓口になってすすめることがほとんどです。
そうなると、なかなか給与収入者の方は税金に無頓着になりがちです。
税金は、ただ単に払うだけではなく、個々人の事情や変化によって納めた税金が戻って来ることも多々あります。(逆もしかり...)
決して「会社まかせ」にするのではなく、常日頃から税金に関心を持っておくことが大切です。
なお、税金に関する相談窓口も利用すると良いでしょう。
国税に関する相談(国税庁):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/index.htm
最寄りの税務署に相談:https://www.nta.go.jp/about/organization/kantoshinetsu/location/saitama.htm
住民税に関する相談:各地域の自治体HPで検索

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